逝き方

ジムのプールに行くと、いつも顔を合わす

プール仲間とでもいうべき女性が、

「Sさん、亡くなったんだって」と私に言った。

「え、Sさんて誰?」と私。

彼女に言われて顔と名前が一致した。

あ~、あの人がSさん、、。

プールに行けばほとんどといってよいほど必ず会う

ご老人で、会えば、天気や水泳の話や、

プールの混み具合いなど簡単な会話を交わす間柄だった。

名前は知らなかった。

とても穏やかな人で、自分は遅いからどうぞと

言ってすぐにレーンを譲るような人で余裕を感じさせた。

かなりの御年齢だったと思うが、

来れば多分、3~400メートルくらいは

泳いでいたんじゃないだろうか。

一日泳がないとどうも体が気持ち悪くてね、

なんて私に言っていたこともあった。

同じプール仲間のおじさんがいうのには

80代まではゴルフ三昧だったけれど

全然上手くならず、

80過ぎてからは水泳になったということだった。

結構な資産家らしく、この辺に家が2軒あり、

ライオンズクラブに入っていて、

会費が高いと言っていたということだった。

そして女性が言うには、

「亡くなる前の日も来てたのよ」

すごいとしか言いようがない。

明日死ぬなんて思わず、

いつものように泳いで、

次の日にあっけなく逝ってしまうなんて。

どんな人生を送ってきたのか、知る由もないが、

よっぽど徳の高い人だったのだろう。

そんなふうに逝けたらと思うが、

徳の高くない私では無理か。

Sさん、お年は90歳だったそうである。

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